Interview

顧問 古森茂幹×CEO 布川友也

「実弾の男」が語る、SaaSスタートアップ成長の鍵。“世界で勝てるSaaSを目指す”ログラスの可能性とは

株式会社ログラスは、2025年3月に株式会社セールスフォース・ジャパンの元副社長である古森茂幹氏をセールス戦略顧問として迎えました。

古森氏は、セールスフォース・ジャパン(以下セールスフォース)や日本ヒューレット・パッカードで要職を歴任し、常に最前線で営業活動をけん引してきた人物です。今回の就任は、ログラスのプロダクトへの深い共感と、「良い景気を作ろう。」という壮大なミッションに強く共鳴したことによって実現しました。
ログラスCEOの布川との対談では、セールスの本質、日本のSaaSスタートアップがグローバル市場で成功するための戦略、そしてログラスへの熱い期待が語られました。

古森 茂幹
2015年に株式会社セールスフォース・ジャパン副社長に就任し、エンタープライズ事業を統括。2018年、取締役副社長に昇進。それ以前は、日本ヒューレット・パッカードで長年要職を歴任し、代表取締役副社長執行役員などを務めた。


ーログラスとの出会いについて教えてください。

古森氏:ログラスとの初めての出会いはタクシーの中でした。ログラスのタクシーCMが私の目の前で流れたのです。率直に、「おもしろい、的を射た広告だな」と感じました。現場のニーズを捉え、ユーモアを交えて問題提起するような広告が好きなんです。

布川さんとはその後、食事をする機会があったのですがそこでもCMの話をしたことを覚えています。

布川:そこでも、「おもしろいCMでしたね」と声をかけていただき、話も弾みましたね。
私は古森さんを以前から存じ上げており、「実弾の男」だと噂を耳にしていました。
理論派なイメージの強かったセールスフォースの中で、泥臭く最前線で結果を出す方なんだろうなという印象を持っていました。

実際にお会いしてみると、噂通りの方でした。会食での場の盛り上げ方や会話術、考え方など、経営者・営業職として本当に素晴らしい。このような方が世の中を動かしているんだなと実感しました。

古森:私は戦略以上に「現場」をとても大事にしているんです。ビジネスはスポーツと違って、明確なルールがなく、テクノロジーの発展によって環境は常に変化し続けます。だからこそ、現場に立ち続けるということが大事なんです。
環境変化にスピーディに対応しながら、顧客の要望に応え続けること、これはSaaSでもハードウェアでも変わらないセールスの本質だと思っています。

布川:ログラスではこれまで、CROなどいわゆるセールスのトップと明確に言える方がいない組織です。この状況に経営陣として課題を感じていました。当然、今後社内からの抜てきや、外部からの採用を行っていく中で、セールスとしての本質を目利きできる古森さんのような方に参画いただけるのはありがたいですね。

ー古森さんがログラスに参画された決め手はなんでしょうか?

古森:まず、ログラスはプロダクトが素晴らしいです。顧客のニーズに対する柔軟性もありますし、顧客のニーズをよく捉えていると思います。経営管理はどの企業にも必要な機能なので、変化の多い現代において、今後ニーズはさらに高まると思います。

それから、「良い景気を作ろう。」というミッションが素晴らしいと思います。私がログラスに参画したのも、「世界で勝てるSaaSを目指す」という布川さんの考えがきっかけです。率直におもしろいですし、応援したいと思いました。

布川:私自身は、日本のSaaSが世界でまだまだ普及していない現状に対して、危機感を覚えているんです。一方で、日本は言語や商習慣が特殊なので、日本のスタートアップが海外進出するタイミングは難しいことは理解しています。

そのため、ログラスはまず国内の経営管理領域でナンバーワンになり、ポジションを盤石にすることを目指してきました。キャッシュフローをきちんと回し、きちんと投資できる体力がある状態で、海外展開を目指していきたいと考えています。

ログラスのミッションは「良い景気を作ろう。」なので、“外貨を稼いで日本国内でお金を巡らせる”ことは、ある種当たり前にできなければならないと思っています。シリーズBでは海外投資家から大型の調達を行い、その資金を元に海外に開発拠点を立ち上げています。これらの取り組みも、ミッションへの道筋のひとつです。

ー国内のSaaSスタートアップが海外で勝つために必要なことはなんだと思いますか?

古森:私自身は日本のスタートアップはどんどん海外に挑戦してほしいと思っています。セールスフォースの場合は、アメリカのプロダクトをヨーロッパ、アジアなどに展開していきましたが、成功していると思います。

もちろんプロダクトを他国で利用する際、一定のローカライズが必要とは思いますが、基本的に「顧客のニーズに応え、信頼を得る」という営業の本質は、どこの国に行っても変わりません。お客様から会社が評価されて、プロダクトやサービスを購入していただく、そして成功につながるという非常にシンプルなループですから。

強いていうなら、日本のSaaSは群雄割拠になっているので、連携して大きなものになったら、より強くなるのではと思っています。

布川:私自身も、本質的にはバックオフィスのSaaSがそれぞれ分かれて事業展開をしている意味はあまりないと思っています。もちろん経営者として簡単に連携するべきとは言えませんが(笑)

私は今でも展示会に足を運んでいるのですが、似たようなプロダクトが並ぶことも多く、各社リードの取り合いだなと。資本力も分散しますし、優秀な人材が奪い合いになっているのも、もったいないと感じています。


古森:そうですね。単独で勝負していくには会社がかなり大きくなるまでのタイミングを見極める必要はありそうです。


布川:それから、日本のSaaSはもっとプロダクトで勝つべきだと思っています。


古森:まさにです。

日本は元来、デザインやエンジニアリングが強いですよね。

私がハードウェアベンダーに在籍していたころ、“デザインフロムジャパン”という家庭用プリンターのキャンペーンが行われました。

家が広いアメリカやヨーロッパのプリンターは、紙を入れるところ、出てくるところが別々なのが当たり前でした。しかし、日本は家が狭いため、プリンターを置けるのは小さなスペースです。
そのため、紙を入れるところ、出るところが一箇所のプリンターを作りました。海外では、これが大きなイノベーションだと話題になったんです。

日本のこういった感性や微細化する技術力・デザインなどは、世界に誇れるものですよね。

ソフトウェアも、よく考えられたプロダクトが非常に多いと思います。こういった職人技の強みを海外に伝えてきちんと差別化できれば、さらにその勝ち筋は強固なものになると思います。

布川:80年代90年代を中心に、日本は素晴らしいプロダクトで世界を席巻してきました。かの有名なスティーブ・ジョブズでさえ、ソニーのウォークマンを作りたいとベンチマークしていたくらいです。

しかし、ソフトウェアの世界では、なんとなくアメリカが先をいくことを前提に考えられてきたと思うんです。アメリカで市場が生まれて、そのトレンドを他国が踏襲していくと言いますか。

しかしながら、日本は世界で一番早く少子高齢化が進む国のひとつなので、「ソフトウェアでこそ本気を出さなければいけない」と思っているんです。

海外のトレンドを追うのではなく、自分たちが価値観を輸出し、トレンドを生み出す。そして、市場で圧倒的なトップになる
。日本人選手が野球でメジャーを目指すように、海外に挑戦していくことが必要だと思っていますし、ログラスがそういう存在になりたい。ハードウェアでは海外で勝てて、ソフトウェアでは勝てないという理由はありませんから。

古森:その気持ちを持ち続けることが大事ですよね。来年・再来年に海外に出なければいけないということではなく、数年先を見据えてビジョンと両立しながら一歩一歩、山を登っていくことが重要だと思います。

ーSaaS企業における営業職の重要性を教えてくだい

古森:大きな戦略を描いた上でも、やはり最後に重要なのは営業なんです。

競合との差別化においても、必ずしも圧倒的な勝利を目指す必要はなく、顧客ニーズに合った僅差での勝利を目指すという考え方が、効率的で生産性の高い成長を可能にします。

営業は顧客の言葉だけでなく、その背景にある真のニーズや優先順位を理解する必要があります。例えば、顧客が100点を求める一方で、本当に必要なのはギリギリの合格ラインかもしれません。そこを見極め、必要な部分にリソースを集中することで、無駄を省き、効率的な営業活動ができると考えています。

布川:まさにです。成長期のスタートアップでは特に、売上のトップラインを伸ばせるセールスが評価されます。しかし、フィールドセールスがこのラストワンマイルをどのように受注してくれるかはとても重要です。

生産性の高い案件をお客様と完璧に合意して持ってきてくれる営業が本当に優秀だと思いますが、この点ではログラスの営業組織はまだまだ伸び代がありますね。一方、当社は日本のスタートアップでは先進的なOTE(On-Target Earnings 。目標達成率100%時の提示年収)も取り入れ、外資のセールスでも参画しやすい環境を整えているため、こうした感性を持つトップレベルの方にも来ていただける組織になりつつあります。

古森:特にSaaSというビジネスにおいて、営業は常にチーム戦ですから。チーム戦の中でも、柔道の団体戦のような形式ではダメなんです。先鋒が出て、負けたら中堅が出て...…という形式は、ビジネスにおいてはありえません。

その都度状況を見極めて、チームの中で誰がどう戦うのかを見極めるのが営業の仕事です。
シンプルなことですが、それぞれの役割の中で「お客様がハッピーになる」ということを追求し、やりがいを持って仕事に向き合うことが重要です。

ーログラスに対する期待を教えてください。

古森:顧客のニーズに応え、最適なソリューションを提供しつづけることを期待しています。ログラスは、エンジニアリング部門とセールス部門の距離が近いと聞いています。セールスが顧客のニーズを的確にとらえ、エンジニアリング部門と共にプロダクトに反映していくことで、顧客からの信頼をさらに深めることができます。

こういった当たり前の積み重ねが、ログラスが世界で勝てるSaaS企業になるためにも、重要なことです。

私自身は、これまでの知見と経験を生かしながら営業戦略と組織強化を支援し、ログラスの皆さんと共に、日本社会の「良い景気」を作ることに、微力ながら尽力していきたいです。

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